仏教とヒンドゥー教は同じ神々を祀っている⁈
仏教は紀元前5世紀にインドで生まれました。同時期にインドで発展したヒンドゥー教と同様、古代インド神話の影響を多く受けたので、共通する神々がたくさんいます。
仏教ではインド神話由来の仏は天部と分類され、名前の最後に「天」が付きます。そこで、ヒンドゥー教の神々が仏教ではどのように扱われているか調べました。
ブラフマーと梵天(ぼんてん)
ブラフマーは、古代インドにおいて宇宙の根源とされた「ブラフマン」を神格化したものです。ヒンドゥー教では創造神ブラフマーはヴィシュヌ(維持神)、シヴァ(破壊神)と共に三大神の1人です。
仏教では梵天と呼ばれます。釈迦が悟りを開いたあと、その喜びに浸り自分だけで満足し、それを広めようとしませんでした。そこで、人々のために法を説くよう梵天が勧め、請い願ったことを「梵天勧請(ぼんてんかんじょう)」といい、仏教発展の重要な役割を担っています。
▲ブラフマー 四面四臂で鵞鳥(ハンサチョウ、ガチョウ)に乗っています。
出展 https://commons.m.wikimedia.org/
▲東寺 国宝梵天像 こちらは四面四臂で額に第三の目があるのが特徴です。4羽の鵞鳥(ガチョウ)に乗っています。出典「朝日新聞出版 国宝の美」
インドラと帝釈天
インドラは天空を神格化した神です。雷と戦いの神でもあります。バラモン教では金髪に金の肌で天空を駆ける軍神で、主役級の神様でした。しかし、ヒンドゥー教へと発展していくうちに、この神様は段々シヴァの役割に取って代わられていきます。現在では「東方の守護神」として位置づけられています。象の王アイラーヴァタという白象に乗っています。
仏教では帝釈天と呼ばれます。忉利天(とうりてん)という天界にある善見城(ぜんけんじょう)に住んで、四天王を従えています。阿修羅との戦いが有名で、阿修羅に勝って仏教に帰依させました。
▲インドラ 白い象アイラーヴァタに乗っています。
出典 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/
▲東寺 国宝帝釈天 額に第三の目があります。イケメン仏像として有名です。こちらも象に乗っていますが、象が少し小さいですね。出典「朝日新聞出版 国宝の美」
クベーラと毘沙門天(びしゃもんてん)
クベーラは地下に埋蔵されている財宝の守護神であり、またローカパーラ(世界を守る者)の一人として北方の守護神とされます。
仏教では、多聞天または毘沙門天と呼ばれます。四天王の1人である多聞天は北の守護神でヒンドゥー教と同じです。毘沙門天はソロ活動の時の名前です。七福神として有名です。
▲クベーラ 肩車されてます。
出典 https://commons.m.wikimedia.org/
▲東寺 国宝兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)
地天女(ちてんにょ)に足元を支えられています。両脇に餓鬼もいます。出典「双葉社 仏像がもっとわかる本」
サラスヴァティーと弁才天
サラスヴァティーは、もともとは西北インドにあった大河の名前を指します。河がもたらす恵みから豊穣の女神となり、流れる河の音から音楽の女神でもあります。4本の腕を持ち琵琶のような楽器を持っています。ブラフマーの妻です。
仏教では七福神の弁才天です。音楽の神、智慧の神、水の神、蓄財の神などさまざまなご利益があります。「才」を「財」に代えて弁財天と表記するお寺もあります。その場合、蓄財の神、五穀豊穣の神として祀られています。
日本では独自の進化を遂げ、宗像三女神(むなかたさんじょしん)の一柱である市杵嶋姫命(いちきしまひめ)と同一視されて、神社にお祀りされています。江の島の江島神社と鎌倉の銭洗弁天(宇賀福神社)が有名です。
▲サラスヴァティー
出典 https://commons.m.wikimedia.org/
▲江島神社 妙音弁才天像 出典「枻出版社 天の仏像のすべて」
ヴィシュヌと釈迦
最後に驚きの事実で終わりたいと思います。
ヴィシュヌはヒンドゥー教三大神の1人です。世界が悪の脅威にさらされたとき、混沌に陥ったとき、破壊的な力に脅かされたときには「維持者、守護者」として様々なアヴァターラ(化身)を使い分け、地上に現れるとされています。
なんと、釈迦も化身の1人なんです。偉大なるヴェーダ聖典を悪人から遠ざけるために、敢えて偽の宗教である仏教を広め、人々を混乱させるために出現したとされています。
ヒンドゥー教にとって仏教はひとつの宗派のようです。釈迦も重要な役割があります。
▲釈迦 出典 https://ja.m.wikipedia.org/
インドで仏教は廃れてしまいましたが、インドで生まれ仏教とヒンドゥー教には深いつながりがあります。